地の利を活かした訳ではないが、日光方面への山は比較的あかるい。当地を代表する獣といえば、 ニホンジカに相違ない。
※右写真:ニホンジカ
春から秋までは主に雑草を中心に食べる。冬枯れの頃には樹皮や冬芽をエサとする。
山岳地を憧憬の山だった頃だから、今から40年余まで時代を戻すと、山地には森があり豊かな自然環境がどこにでもあった。
そのあるがままの大自然の中に野生動物は暮らしていた。
日本が右肩上がりの高度成長期を迎えると、これまでなら見向きもされなかったブナ林に注目が集まった。パルプ材としてブナは大量に伐採し、
供給される役を担ったのだ。
自然環境下におけるブナの功績は大きく、自然という生態系の一角を成すのは当然で、森林の大半を占めていた。
このブナを切り倒してしまえば、規則正しく機能していた自然サイクルが停止してしまう。生態系破壊は樹下植物を枯死させ、
森の動物の生活を奪いあげてしまう。たとえば棲家を失ったニホンジカは、新しいテリトリーを求めて四方に移動することを余儀なくされる。
奥白根山、錫ヶ岳、宿堂坊山、皇海山、袈裟丸山と続く群馬・栃木県境稜線に岳人の人影はまばらである。それに反して、
支稜から主稜へ向かう尾根には結構ニホンジカを見かける。山地の棲息地から奥地へ逃げのびた一群であろう。
奴らはやむを得ずヤセ尾根へ追い上げられ、この地に留まっている。困ったことは慢性的エサ不足である。そこで大木になったモミ、
ツガの樹皮を食い荒らす行為にでる。
樹木における樹皮の役割は過大である。炭素同化作用いわゆる光合成の際、大量の水を供給するのが樹肌と樹皮の隙間だからだ。すなわち、
樹皮に守られて水は上部葉脈へ送ることができるのである。
最も大切な樹皮が失われたら、水分の補給は停止され、樹木は何時の間にか枯れてしまう。
近年、針葉樹の立ち枯れが目立つ。それも成長の途中と思われる、巨木枯死の原因を調べてみると、樹木の周囲にある樹皮が失われた結果、
命ある木が食害にあって消失している現実がある。また、天然記念物に指定された、ニホンカモシカが追い討ちをかけ、樹木被害を拡大している。
現在、日光保護区から逃げ出した、ニホンジカはこれまでに棲息していなかった尾瀬山中まで棲息地を広げ、波瀾万丈の様相を展開している。
確かに、身近な野生動物との出会いは嬉しい。以前であれば、たやすく森の生き物にはお目にかかれなかった。それは大自然があり、
豊富な原始林の中で動物たちが暮らしていける営みがあったからだ。
さて、今後において人と野生動物との関わりは如何なる運命をたどるのか、その結末は間もなくやって来る。

ニホンジカ同様にカモシカも冬期間は樹皮を食べる。

ニホンカモシカは数kmに及ぶテリトリーを持ち、
エサ場となる付近に大量のフンをする。